「でもそれって、考えてみれば私も同じ状況なのよね。私たちの関係って、簡単に言えばお互いの秘密を誰にも言わないっていうものだったでしょう? 私は琥珀ちゃんにいじめの元凶が私だって知らせないでほしいって話で、廈織くんは花音ちゃんを女として好きだってことを誰にも言わないでほしいって話だったよね。私ね、琥珀ちゃんに全部話すってあなたに約束してから、実際その通りにしたの。色々あったけど、ちゃんと和解もできた。その時に、私が一番知られたくなかった秘密は無くなったんだ。だからその時点で私たちの共犯者としての関係は破綻してるんだよ」
「……そうか」
彼女の言うことが事実だとしたら、ボクらの関係とは、一体何なのだろう。
もはや互いの秘密という弱みも無くなり、本来それだけの繋がりだったボクらはどうして今この時も共にいるのだろう。
それはもう、とっくに答えの出ている問いなのだけれど、ボクはその答えを口に出すことが怖かった。
言葉とは思っているよりも人の心に大きな影響を及ぼすことがある。
それこそたった一言で全てが解決してしまうような。
相手を殺してしまうような幅を持っている。