ボクの言葉を遮って、花音が声を荒げた。

 ボクの部屋が二階の隅にあるとはいえ、一階の寝室で眠る母さんまで聞こえてしまうのではないかと、ほんの少し焦る。


「私はずっと、ずっとお兄ちゃんが好きだった……これは本当。確かにお母さんと血が繋がっていないことはショックだったけど、それはお母さんが悪いわけじゃないもん……お母さんの反応を見たら分かるでしょう? お母さんの気持ちは十分に伝わってる」


 そう言って、花音はボクの苦し紛れの誤魔化しの言葉をキッパリ否定し、説き伏せた。

 ボクはいよいよ墓場まで持っていくと誓った己の気持ちと対峙しなければいけないようだ。

 こんなに早くその時が訪れてしまうとは思ってもみなかった。

 花音が、ボクと同じ気持ちだった場合なんて、考えたことがなかった。想定外だったのだから。

 花音は告白を続ける。


「苛められてばかりだった私を、お兄ちゃんはいつも助けてくれた。今までできた彼女との、どんな約束より、私を優先してくれた。それが死ぬほど嬉しかったの。ずっと、お兄ちゃんの彼女になりたかった……それが絶対に叶わないことは分かってたけど、それでも諦めきれなかった」


 ボクは考える。

 どうすることが花音にとって最善なのか。

 ボクにとっての最善なのか。兄妹にとっての解決策なのか。

 悩み、考え過ぎて何も言わなくなったボクを見て、花音は涙を自らの手で拭い、寝転んでいた体を起こす。

 そして、ボクの目の前に座り直し、ボクの名を呼んだ。