その言葉を聞き届け、ボクは花音の体を強引に引き剥がすと、その場に座り込んだ。

 今さらになって、後悔の念が押し寄せてきたのだ。


「花音、それは……」


 流れでこのまま彼女に襲いかかることも出来たが、寸でのところ理性を立て直したボクは、自分のベッドの上で寝転ぶ無防備な彼女を見下ろしていた。

 そのままボクは、言葉にすることが出来ず、代わりに首を横に振った。


「……どうして?」


 花音は、泣いていた。


「だってお兄ちゃん……花音のことが好きなんでしょう? 花音もだよ。花音も、お兄ちゃんが大好き。私たち、両想いなんだよ……? 花音、お兄ちゃんになら、何されてもいいよ……お兄ちゃんの好きにしてよ……」


 泣きながら紡がれる妹の言葉に、ボクは唇を噛みしめる。


「花音」


 もはや幼い頃と現在の一人称がごちゃ混ぜになっている花音に、ボクは兄として、優しく声をかける。

 花音は涙でぐちゃぐちゃになった顔でボクを見た。


「お前、やっぱりまだ無理してるんだろ。今まで本当の家族だと思ってた人たちが急に遠くに行ったみたいに感じてるんじゃないのか。まだ、受け入れられないだけなんだろ? だから、こんな自暴自棄みたいなこと――――」


「違う!」