それ以来、彼女の恋の進展は聞いていない。
花音を見つけたのは家を出てから十分ほど経過した頃だった。
ボクの読み通り、彼女は自宅近くの公園にいた。
幼い頃、よく花音と二人で遊びに来た馴染みの公園であり、思い出の場所である。
花音が座っていた場所は、先日共犯者になった彼女と一緒に座ったベンチだった。
「花音!」
「……お兄ちゃん」
こちらに気が付いた花音は肩を跳ねさせる。
プラプラと揺れる足が地面につき、花音の目がボクをとらえる。
「家へ帰ろう。帰って、ちゃんと話し合おう」
「……」
花音は何も言わなかった。
代わりにボクの手を握り、抵抗することもなくあっさり自宅へ戻る選択をした。
いつの間にか差がついた手の大きさにすら、男女の差を感じてしまい、不謹慎にも胸が大きく高鳴った。
花音はボクの手を、正確にはボクの右手の人差し指と中指を小さな手で握りながら、決して放さなかった。
自宅に戻った花音は母さんに強く抱き締められ、戸惑いながらも小さな声で「ごめんなさい」と謝罪の言葉を述べた。