「あ、もしもし希望ちゃん? どう? 勉強してる?」


『七海ちゃんのアドバイス通りにやってるけど、調子いいわよ。琥珀ちゃんは? 一人でも勉強できてる?』


「うーん、まあ……」


『あー、その反応さてはサボってチョコでも食べてたな?』


「ごふっ! なんでバレたの!」


 口内に残る悠ちゃんからのお土産チョコレートの欠片にむせる。

 電話口の向こう側で慌てる私の声を聞いた彼女が笑った。


『ふふふ、だってなんだか声がくぐもってるし、今日だって勉強会の間ずっと「甘いものが食べたい、糖分が足りない」なんて言ってたから……甘いもので一番先に浮かんだのがチョコレートってだけ。まさか当たるとは思わなかったけど』


「なるほどね……希望ちゃんは私の性格をよく分かってるなあ」


『まあ、中学時代から仲良くなろうとそれなりに努力はしてきたからね』


「それは初耳」


『だってほら、仲良くなっておきたいじゃない? 彼氏の大切な人とは』


「ああ……その彼氏のことなんだけど……」


 そこで私はようやく悠ちゃんの方へ視線を話題を移す。

 彼は相変わらず落ち着かない様子だったが、さきほどより幾分覚悟が決まったような力ある目をしていた。

 これなら大丈夫だろう。


 何を言うまでもなく頷いた私は希望ちゃんに悠ちゃんとの和解提案を持ち込むことにした。