「絶対だからね。私、そんなに強くないんだから」


 そっと私の前に差し出された小指に、思わずうろたえる。


「琥珀ちゃん……?」


「約束」


 そう称された和解提案に、私は汗で濡れ、冷えた指を彼女と交えた。

 そして彼女は、私に告白する。


「私ね、悠希が好きだよ。生まれた時からずっと好きだった。希望ちゃんのことも、羨ましくてしかたなかったんだから」


「うん、うん……ごめんね、全部知ってたのに、私、意地悪ばっかりして」


「こんなこと、もう終わりにしよう? 一人の男の子を奪い合って泣くのはもう嫌だもん。希望ちゃんも新しい恋を見つけたんだし、これからは一緒に恋バナだってできるよ。だからさ、私は希望ちゃんを許します」


 約束、と指切りが行われ、離れた互いの手。

 彼女はもう怯えている様子はなく、いたずらの過ぎた同級生にするように苦笑していた。


「ありがとう、琥珀ちゃん……ありがとう」


 涙で霞む視界の中、琥珀ちゃんは私に手を差し伸べてくれた。


「ほら、あんまり泣いてると、目が腫れちゃうよ? 仲直り記念に、これから一緒にパンケーキ食べに行かない? 美味しいお店が駅前にあるんだよ。食べ終わったら、二人でプリクラも撮ろう!」


 すっかり教室で見るいつもの調子に戻った琥珀ちゃんに、私は涙を拭いて、くしゃくしゃの笑顔を見せる。


「うん、琥珀ちゃんは優しいね」


 私の言葉に琥珀ちゃんは不思議そうに首を傾げ、「当然」といった顔と言葉でまた私を泣かせるのだ。


「だって私たち、友達じゃん」


 互いに何の思惑もなく、素直に笑い合えたのは、これが初めてだった。