「お願いよ……琥珀ちゃん、私の話を聞いて」


「……何」


 ほとんど泣きそうになりながら絞り出した声に、琥珀ちゃんはバツが悪そうに言った。

 私は泣くのを堪えながら、彼女の目をしっかりと見つめ、言った。


「琥珀ちゃんは、私を許さなくてもいいよ」


 それは、私が精一杯考えた彼女への妥協案だった。

 許されたい、というのは私のエゴでしかない。

 それならいっそ許しなどいらない。

 彼女の心の傷が癒えるまで、私は待とう。

 私は自分なりのやり方で琥珀ちゃんと、己の罪と向き合ってみよう。


「どういう意味、それ」


「苛めてた本人が今さら許して、だなんて、おかしな話でしょう? 謝られたら、許さなくちゃいけないなんてルールはないもの。だから、琥珀ちゃんは私を許さなくてもいいよ」


「意味が分からないんだけど」


「許す、許さないを決めるのは全部琥珀ちゃんだよってこと。私は琥珀ちゃんが決めたことに従うよ」


 私の言葉に琥珀ちゃんは驚きながらもゆっくり立ち上がり、言った。


「じゃあ……もう、いじめたりしない?」


 予想外の言葉に私は目を丸くした。

 彼女は怯えているように見えた。


「うん、しない。約束だよ」