「えっと、なんて言ったらいいか正直分からなくて……ごめんね、少し混乱してる」
苦笑いを続ける彼女を見て、胸が苦しくなった。
私はまた、こうして彼女を苦しめている。
「そうだよね、うん……ごめんね、私のせいで、こんな」
「謝らないでよ。なんて返せばいいか分からない」
それでも今の私には、謝罪の言葉をかける以外、方法が見つからない。
「でも……」
「あの時のことは本当に怖かったし、相手に怒ったりもしたけど、今はもう、正直思い出したくない。だからもう、やめよう? こんな話、忘れようよ」
言われて気が付いた。
謝れば許してもらえると思っていた自分がどんなにバカだったのか。
自分の行いを心の底で軽視していたのは他の誰でもなく、私自身だった。
私に出来ることは、果たしてこれ以上何もないのだろうか。
私は、本当にそれでいいの?
「ねえ、琥珀ちゃん、聞いて」
「やだ」
琥珀ちゃんは私を拒絶するかのように目を逸らした。
「聞いて」
「嫌だってば」
ここで逃げたら、挫けてしまったら、私は廈織くんに合わせる顔がなくなってしまう。
彼が私を共犯者に選んでくれた事実は、彼が私を信頼してくれたからこそのもの。
それなのに、ここで私が彼との約束を破るわけにはいかない。
それだけは、絶対にしてはいけない。