「部活中にごめんね。琥珀ちゃん、今、大丈夫?」
横目で他の部員の様子を気にしながら聞いた。
琥珀ちゃんは口の周りについたクッキーの欠片を気にしながら答えた。
「平気、平気! 始業式だし、部活って言っても今日はコンクールに間に合わない組が居残りで作品仕上げてるだけだから!」
「そ、そうなの」
そのわりには約一名、余裕に満ちているように見えたのは気のせいだろうか。
「それで? 私に何か用があるの?」
首を傾げながら琥珀ちゃんに尋ねられ、彼女の言葉で現実に引き戻された私は、いよいよ生唾を飲み、拳を後ろ手で握る。
「えっと……ここじゃ話しにくいかな」
事のいきさつを気にする他の部員たちの視線を気にしながら答えると、それを察知した琥珀ちゃんは素早く美術室の扉を閉め、小声で言った。
「分かった。二人で話せる場所に移動しよう」
「ごめんね、琥珀ちゃん」
「いいよ、友達じゃん」
私は、こんな風に言ってくれる女の子に、自分の身勝手な気持ちで酷いことをしたのだ。
彼女の優しさが嬉しい反面、悲しくなった。
果たして全てを知った時、琥珀ちゃんは、私を許してくれるのだろうか。
私は震える手を握り、鉛のように重い足を引きずりながら、先を行く琥珀ちゃんの後を必死に追いかけた。