「そういえば、私ね、ついに決めたんだけど」
「うん」
「私、琥珀ちゃんにしたこと全部話して、謝ろうと思うんだ。それで絶交されても仕方ないかなって思ってもいる。だからさ、その時は慰めてよね」
苦し紛れに笑ってみせると、彼は嬉しそうに笑って力強く頷いた。
「もちろんだよ。上手くいくように、心から応援してる」
「ありがとう……私、頑張るね」
この決断は、一つの大きな意味を持っている。
それは事実上の「共犯者」契約の破綻。
私は「琥珀ちゃんに真実を知らせないこと」を条件に彼と共犯者の協定を結んでいた。
それを自らの手で破るというのは、私が彼との約束において握られていた弱みがなくなることを意味していた。
それから二十分後、ケーキとスーパーの袋を下げて帰宅した花音ちゃんに小耳で廈織くんとの進展を聞かれたが、私は「なにもなかったよ」とだけ答え、夏休み明けに待っている運命の時をどう乗り切ろうか、花音ちゃんが買ってきてくれたケーキを食べながら考えていた。