「はーい! あ、希望さん! 今開けるので待ってくださいね」
言い終わるのが先かというタイミングで家から飛び出してきた花音ちゃんは、二つに結った髪の毛を風に揺らしながら門の鍵を開けてくれた。
「久しぶりね。旅行の日以来かしら?」
「そうですね! 毎日メールしてたから、そんな気はしませんけど」
「ふふ、私もそんな感じ」
笑顔の花音ちゃんは、そのまま私に向かって手招きをしながら家の扉を開ける。
恋敵という立場を考え、あまり深入りしないように彼女との仲を築き上げたつもりだが、余計な気を使わなくても素直に私たちは人間としての波長が合っているように思えた。
「それにしても、すごく立派なお家ね。まるでホームドラマに出てくるセットみたい」
私が玄関の前で再度、久藤家の外観に見惚れていると、背後で聞いたことのある声がして、私は咄嗟に振り返った。
「あれ、もしかして希望さん?」
私は突然の人物の登場に、思わず目を見開いてその場で固まってしまった。