大きく振りかぶられた手の平に、私は咄嗟に目を閉じる。
その瞬間の声は、まさしく鶴の一声だった。
声の主は、私の存在に気が付くと、慌てた様子で駆け寄ってきた。
「琥珀ちゃん! 大丈夫?」
希望ちゃんだった。
彼女は腰が抜けてしまった私の手を取り、友人である二人を鋭い瞳で睨みつけた。
「私、こんなこと頼んでないんだけど」
突然の出来事に状況が理解出来ない私は、驚いた顔で彼女を見た。
「何が起きてるの……」
「ごめんね琥珀ちゃん。怖かったでしょう」
悲しそうな表情を浮かべながら、希望ちゃんは静かに口を開いた。