天然、で済まされるほどの可愛いものではない。

 バカなのかと呆れるほど、彼女は頬を染めながら告白したのだ。

 本来なら、秘めておくべき想いを易々と。


「ちょっと、それって……」


「えー! なにそれ素敵! 少女漫画みたいなんですけど! ね、琥珀」


「う、うん」


 隣にいる琥珀ちゃんは、なんとも複雑そうな顔をしている。

 彼女の方が関係的には望みがあるとはいえ、似た境遇に何か思うところがあるのだろう。


「でも別に、付き合いたい、とかそういうことは考えてないんです。兄妹ですし……ただ、ずっと隣にいてくれたらいいのになって思うくらいで……お兄ちゃん、いつも別の女の人ばかりと仲良くするから、これはヤキモチです」


「それって好きな人じゃなくない? 誤解される言い方しない方がいいと思うけど」


 しまった、と思った時には手遅れだった。

 私の言葉は口を伝いで音に乗る。

 花音ちゃんはほんの少し驚いて、返答した。


「……好きな人、ですよ。今も昔も、ずっと。お兄ちゃんは、私の初恋の人ですから」