「だから、分からないんだよ。こんなんだから愛想つかされたってのだけは、分かるんだけどさ」
一発殴ってやろうと思ったのに、奴が困ったような、泣きそうな顔で笑うから、私はそれ以上返す言葉を見失ってしまった。
だから、とりあえず、謝らなくちゃ。
「その、ごめん。無神経だった」
「ん。いいよ、悪いのはハッキリしない俺の方だ」
悠希なりに、自分の置かれた状況に苦しみ、参っているように見えた。
そもそも、私にだって非はある。
私は幼なじみに甘えていただけなのかもしれない。
恋心で美化された高過ぎる理想を無理矢理に悠希へ押しつけすぎていただけだ。
気持ちに気付いてほしい。少女漫画のヒーローのように、私を助けてほしい。私だけを見てほしい。
そんなのは幻想に過ぎない。
ここは現実であって、私たちはたった十六歳の子供なのだから。
遠くで七海たちが花火を振り回して楽しそうにはしゃぐ声がする。
夏の思い出の一部が風景に溶け込む片隅で、私たちはただじっと身を寄せ合い、それからしばらく言葉を交わすことはなかった。