「だから、あの二人ってそのうち付き合いそうじゃない? って話! この旅行を企画したのだって、主催は廈織くんだけど、希望ちゃんが提案者みたいだし」
「そうなのか?」
「うん。廈織くんが言ってたから間違いないと思う」
「そうか」
元カノが自分の友人と仲を深めているかもしれない。
そんな疑惑に悠希は戸惑いを隠せないようで、その視線は先程の私同様、落ちた線香花火の火球へと移っていた。
実際、彼の瞳に映るのは、白い砂浜でも、火球でもなく、深く暗い何かなのだろうけれど。
「悠希は、まだ希望ちゃんのことが好きなの?」
恐る恐る聞いてみた。
自分がフラれた理由すら未だ分からない彼は、何を考えているのだろう。
「分からない」
そう思っていたのに、悠希はなんとも曖昧な返答をした。
「は? なにそれ」
思わず怒りで声が震えた。
正確には呆れも少し混じっていた。
ダメな男だとは長年の付き合いから分かってはいたが、ここまでなのか。
長く付き合った彼女にフラれて尚、自分の気持ちにすら気がつけないなんて。