「ううん。私は食べ過ぎちゃったから少し休憩。そこの幹事さんと一緒に後片付けをしてから合流するから、皆を連れて行ってあげて」


 そう言って、廈織くんの方から琥珀ちゃんの方へ視線を向けた。


「まだそんなに打ち解けられていない人もいるでしょう? 私たちのことは気にしないで」


 いまいち納得のいかない顔をする琥珀ちゃんに再度説明し、こちらも納得のいかない表情を浮かべる廈織くんを満面の笑みで黙らせた。


「うーん……後片付け任せちゃってごめん。次は私たちが何かするからね」


「琥珀ちゃんって律儀だよねぇ」


「性格! 希望ちゃん、ありがとうね。廈織くんも」


「うん」


 ようやく言葉に背中を押されたのであろう琥珀ちゃんは、そのまま他の全員を連れて浜辺へ走っていった。


「さてと、それじゃあ片付けますか。ごめんね、付き合わせちゃって」


「いや……」


「正直に言っていいよ。一緒に花火しに行きたかったんでしょ、花音ちゃんと」


「うん」


「ふはっ! 花音ちゃんのことになると本当、素直になるよねぇ、廈織くん」


「しょうがないだろ……これでも結構舞い上がってるし、余裕ないんだ」


 頬をほんのり赤く染めながら眉を下げる彼に私は再び笑みをこぼした。

 舞い上がっているのは私も同じ。

 好きな人と同じ空間にいて、同じものを食べている。

 私にしか話せない秘密がある。

 そんな一つ一つが特別な宝物のようにキラキラと輝いて見える。

 それが実らない恋だとしても、心に芽生えたこの想いが無駄になることは決してないだろうから。


「廈織くんって結構一途だよね」


「そうかな」


「うん、そうだよ」