それぞれが様々な思いを抱えて始まった夏の小旅行だったが、一日目は何の問題もなく終わろうとしていた。
その日は午前中いっぱいを移動に費やした。
無事に別荘へ到着した頃、日は既に傾き始めていた。
急いで夕食の準備をした私たちはそれから皆でバーベキューを楽しんだ。
そして現在。
春田希望と久藤廈織は食事の片手間に片付けの準備をしながら白い砂浜を見ていた。
バーベキューが始まってから少し時間が経過した午後八時。
全員のお腹と心が程よく満たされ、食事の席もそろそろお開きかという雰囲気が漂っていた。
浜辺では一足先に待ちきれなかった七海ちゃんが花火の袋を抱えてこちらに向かって手招きをしている。
「たく、七海は頭がいいのに中身が子供なんだから……片付けしてからにすればいいのに」
言いながら、浜辺で待つ彼女の元へ行きたくてうずうずしている琥珀ちゃんの姿に私はクスリと笑った。
今さらそんなことを考えても意味はないのだけど。
「はーやーくー! 皆で花火しよーよー!」
暗闇から元気に聞こえる声。
「今行くってばー! ね、希望ちゃんたちも行こうよ」
咄嗟に声をかけられたことに内心とても驚きながら私は首を横に振った。