俺は玉葱は、完全に食べられないいうわけではない。微塵切りにして他の食材に混ぜ、玉葱の存在を消せば何とか食べられるのだが、少しでも味がすれば即アウトで、祖母は俺の食事には苦労したと思う。
ならば、玉葱の代わりにシャキッという感触を出すにはどうしたらいいか、店の冷蔵庫には都合の良いものが入っていた。
「ではどうするの? タルタルソースがなければ……」
花江さんの問いに、俺は「ピクルスです」と答えた。
「ピクルス?」
店で出そうとと試作していた、胡瓜のピクルスである。
胡瓜は、花江さんのお店で仕入れたものだ。
「他に、辣韮漬けやたくあんなどでも代用できるんですよ」
鶏唐揚げに染みこんだ甘酢ダレ、その上にたっぷりとかかったタルタルソース。
俺がバイトをしていた『居酒屋 ドラゴン』のレシピ。ただ俺は、完コピーはしなかった。
タルタルソースには、ピクルスとマヨネーズの酸味に加え、もう一つプラスしてあるのだ。
「……まぁ」
花江さんは「美味しい」と最後まで食べてくれ、俺は、花江さんにタルタルソースのレシピを教えた。
きっと、花江さんの娘さんも今度からは母親の作るチキン南蛮は食べてくれるだろう。
「美味しかったわ。清太郎くん」
花江さんはそう言って、店を出て行く。
『客――、来るとええな?』
「まだ……、いたのか?」
座敷童子男は、ちゃっかりチキン南蛮を自ら更に乗せている。
『時々、甘酢タレやタルタルソースに負けて、衣がしんなりしているものに遭遇するけど、これはまったくなし。ふんわり食感がしっかり生きているし、甘酢ダレもよく絡んどる。さらに肉汁もいっぱいや。甘酢タレもタルタルソースも主張し過ぎない、バランスのいい味わいや』
座敷童子男の食レポに、俺は何とも居心地が悪い。
「そりゃ、どうも……」
『これからも俺の食い物も、この調子で頼むわ』
「ずっと居座る気かよ!」
『そない照れるなって』
「照れてねぇーよ!」
京都・祇園の裏通り――、洋食屋『一期一会』はこれから先どうなるのかわからないが、俺はここで生きていく。
多くのお客さんが俺の料理を食べて満足してくれたなら、俺はそれでいい。
さぁ――、今度は何を作ろうか。
洋食屋『一期一会』、開店である。
ならば、玉葱の代わりにシャキッという感触を出すにはどうしたらいいか、店の冷蔵庫には都合の良いものが入っていた。
「ではどうするの? タルタルソースがなければ……」
花江さんの問いに、俺は「ピクルスです」と答えた。
「ピクルス?」
店で出そうとと試作していた、胡瓜のピクルスである。
胡瓜は、花江さんのお店で仕入れたものだ。
「他に、辣韮漬けやたくあんなどでも代用できるんですよ」
鶏唐揚げに染みこんだ甘酢ダレ、その上にたっぷりとかかったタルタルソース。
俺がバイトをしていた『居酒屋 ドラゴン』のレシピ。ただ俺は、完コピーはしなかった。
タルタルソースには、ピクルスとマヨネーズの酸味に加え、もう一つプラスしてあるのだ。
「……まぁ」
花江さんは「美味しい」と最後まで食べてくれ、俺は、花江さんにタルタルソースのレシピを教えた。
きっと、花江さんの娘さんも今度からは母親の作るチキン南蛮は食べてくれるだろう。
「美味しかったわ。清太郎くん」
花江さんはそう言って、店を出て行く。
『客――、来るとええな?』
「まだ……、いたのか?」
座敷童子男は、ちゃっかりチキン南蛮を自ら更に乗せている。
『時々、甘酢タレやタルタルソースに負けて、衣がしんなりしているものに遭遇するけど、これはまったくなし。ふんわり食感がしっかり生きているし、甘酢ダレもよく絡んどる。さらに肉汁もいっぱいや。甘酢タレもタルタルソースも主張し過ぎない、バランスのいい味わいや』
座敷童子男の食レポに、俺は何とも居心地が悪い。
「そりゃ、どうも……」
『これからも俺の食い物も、この調子で頼むわ』
「ずっと居座る気かよ!」
『そない照れるなって』
「照れてねぇーよ!」
京都・祇園の裏通り――、洋食屋『一期一会』はこれから先どうなるのかわからないが、俺はここで生きていく。
多くのお客さんが俺の料理を食べて満足してくれたなら、俺はそれでいい。
さぁ――、今度は何を作ろうか。
洋食屋『一期一会』、開店である。