一月後――、礼子さんが母親とどうなったのか、俺は知らない。
実は俺は、偉そうな事を言ってしまったと反省しているのだ。軽く、自己嫌悪中である。
『清太郎、こりゃあマジであかんやつや』
洋食屋『一期一会』の厨房――、フライパンの『ぶつ』を目にした自称・座敷童子がこの日も吠える。
「少し口を閉じていようという気は、お前にはないのか? 貧乏神」
『貧乏神やない。座敷童子や』
俺が一向に座敷童子と認識しない事に焦れたのか、奴は座敷童子とプリントされたTシャツでアピールして寄越す。
いったい何処で買ってきたのか。いや、座敷童子なんてプリントした奴のセンスもどうかと思う。
他に唐傘おばけとか、一つ目小僧とかプリントされたものがあるとか? 百鬼夜行の大昔なら妖怪ご一行様に売れたかも知れないが。
俺は、新たなメニュー開発中でもある。フライパンの中身は一応、ハンバーグである。黒く焦げていたが。
予定では、この後にデミグラスソースで煮込むつもりだった。
ハンバーグになる予定であった『ブツ』は、哀れなくらいに黒々としていた。賄いとして消えるため無駄にはならないが、自称・座敷童子は壁に隠れ、青い顔でこっちを見てくる。
『それを食えと!? 拷問や! 妖怪苛めや!』
「うるさい! 文句があるなら出ていけ。貧乏神め!」
『座敷童子や!』
「あの――……」
「え……」
俺が座敷童子と舌戦を展開していると、入り口に礼子さんが立っていた。何故か、肩で息をしている。
「……何度もお声をかけたんですけど……、なんか……声をかけてはいけないかなぁと……」
礼子さんは、申し訳なさそうにしている。彼女には、俺の前にいる座敷童子は視えていないのだ。
確かに、飲食店の店主が一人で喚き散らしている姿を見たら、ドン引きだろう。
「あはは……、すみません。独り言を言う癖があるんですよ、俺」
礼子さんは、クスッと笑っている。
彼女の来店は、凡そ一ヶ月ぶりであった。
「――今日はお礼に」
「お礼?」
実は俺は、偉そうな事を言ってしまったと反省しているのだ。軽く、自己嫌悪中である。
『清太郎、こりゃあマジであかんやつや』
洋食屋『一期一会』の厨房――、フライパンの『ぶつ』を目にした自称・座敷童子がこの日も吠える。
「少し口を閉じていようという気は、お前にはないのか? 貧乏神」
『貧乏神やない。座敷童子や』
俺が一向に座敷童子と認識しない事に焦れたのか、奴は座敷童子とプリントされたTシャツでアピールして寄越す。
いったい何処で買ってきたのか。いや、座敷童子なんてプリントした奴のセンスもどうかと思う。
他に唐傘おばけとか、一つ目小僧とかプリントされたものがあるとか? 百鬼夜行の大昔なら妖怪ご一行様に売れたかも知れないが。
俺は、新たなメニュー開発中でもある。フライパンの中身は一応、ハンバーグである。黒く焦げていたが。
予定では、この後にデミグラスソースで煮込むつもりだった。
ハンバーグになる予定であった『ブツ』は、哀れなくらいに黒々としていた。賄いとして消えるため無駄にはならないが、自称・座敷童子は壁に隠れ、青い顔でこっちを見てくる。
『それを食えと!? 拷問や! 妖怪苛めや!』
「うるさい! 文句があるなら出ていけ。貧乏神め!」
『座敷童子や!』
「あの――……」
「え……」
俺が座敷童子と舌戦を展開していると、入り口に礼子さんが立っていた。何故か、肩で息をしている。
「……何度もお声をかけたんですけど……、なんか……声をかけてはいけないかなぁと……」
礼子さんは、申し訳なさそうにしている。彼女には、俺の前にいる座敷童子は視えていないのだ。
確かに、飲食店の店主が一人で喚き散らしている姿を見たら、ドン引きだろう。
「あはは……、すみません。独り言を言う癖があるんですよ、俺」
礼子さんは、クスッと笑っている。
彼女の来店は、凡そ一ヶ月ぶりであった。
「――今日はお礼に」
「お礼?」