不思議に思った僕は雑草の中をよく観察する。するとそこにはどこかで見た緑の葉が雑草に混じって多数生えていた。
「えっ、ペパーミントの葉?」
僕が言うと、想子は手を伸ばしてその葉をもぎ取り、鼻で嗅いだ。
「あっ、本当だ。これはペパーミントだ」
想子も不思議そうに僕を見つめた。
「なんでこんなところにペパーミントが生えて……」
そこまでいった時、これが映見の仕業だと気がついた。
映見は本当は畑のような広い土地に植えたかった。
でもペパーミントは繁殖力が強く、雑草のようにどんどん増えて手に負えない植物だ。映見はそれを知っていて、わざとここに植えたに違いない。
ここなら元から雑草が生えている。ペパーミントなら、虫除けにもなり雑草としてもそんなに迷惑にならないと思ったのかもしれない。
映見とペパーミントの共通点。
それはしつこいということ。
今なら映見の気持ちが伝わってくる。
――何度も生えて戻ってきてやる。だから忘れないで、ベストをつくすことを。忘れないようにしつこく何度も、そしてどんどん増えて生えてやるから。
諦めるな、一生懸命になれ。それが映見のメッセージだ。
「柴太君は知ってたんだね」
僕が訊くと柴太君はハアハアいいながら舌をだらりとさせ、つぶらな瞳を細ませて僕を見つめた。まるで笑っているように見えた。
風がいい感じに吹いて、僕の頬を撫でていく。
その周辺で遊んでいる子供たちの声が耳に届き、僕は和香ちゃんや郁海ちゃんが戯れている錯覚を覚えた。その側で未可子さんがその様子を見届け、その隣に写真でしか見たことないけど僕の本当の母らしき人が並んでいる。そこにずた袋を持った映見が元気に走って現れ、その袋から小さな砂のような種を一握りずつ取り出してみんなに渡している。
映見は豪快に種を放り上げ、それらは風に乗って流れていく。それにならってみんなも同じように種を大地に撒き散らした。
やがて種はにょきにょきと芽を出して辺り一面を緑の海にしていく。そしてそれはずっと先へと増え続け、それを見てみんな愉快に笑っていた。
映見はそうやって天国で種を撒き続けているのかもしれない。
「しつこいのもほどほどにしとけよ」
僕は自分が想像したシーンが本当のように思えて、映見に意見した。
『しつこいということは、一生懸命ってこと。ベストをつくして何が悪い』
そんな言い返しが聞こえてきそうだった。
僕はポケットからスマホを取り出し、その辺りに生えているペパーミントに向かって撮影する。
映見がそこに立って笑顔を向けているように感じた。
映見、本当は僕の傍にいるんだろ。だって映見が賭けに勝ったんだから。僕を放っておくわけがないじゃないか。
柴太君が何もない空間をじっと見ていた。
もしかしたら柴太君には映見の姿が見えているのかもしれない。
僕も同じ方向を見る。
そして映見に負けないくらいの笑顔を向けてやった。
風が吹いて妙に目じりや線を描いたように頬がスースーした。でもペパーミントのようにそれはすっきりとして、映見に優しく触れられている気分だった。
(了)
「えっ、ペパーミントの葉?」
僕が言うと、想子は手を伸ばしてその葉をもぎ取り、鼻で嗅いだ。
「あっ、本当だ。これはペパーミントだ」
想子も不思議そうに僕を見つめた。
「なんでこんなところにペパーミントが生えて……」
そこまでいった時、これが映見の仕業だと気がついた。
映見は本当は畑のような広い土地に植えたかった。
でもペパーミントは繁殖力が強く、雑草のようにどんどん増えて手に負えない植物だ。映見はそれを知っていて、わざとここに植えたに違いない。
ここなら元から雑草が生えている。ペパーミントなら、虫除けにもなり雑草としてもそんなに迷惑にならないと思ったのかもしれない。
映見とペパーミントの共通点。
それはしつこいということ。
今なら映見の気持ちが伝わってくる。
――何度も生えて戻ってきてやる。だから忘れないで、ベストをつくすことを。忘れないようにしつこく何度も、そしてどんどん増えて生えてやるから。
諦めるな、一生懸命になれ。それが映見のメッセージだ。
「柴太君は知ってたんだね」
僕が訊くと柴太君はハアハアいいながら舌をだらりとさせ、つぶらな瞳を細ませて僕を見つめた。まるで笑っているように見えた。
風がいい感じに吹いて、僕の頬を撫でていく。
その周辺で遊んでいる子供たちの声が耳に届き、僕は和香ちゃんや郁海ちゃんが戯れている錯覚を覚えた。その側で未可子さんがその様子を見届け、その隣に写真でしか見たことないけど僕の本当の母らしき人が並んでいる。そこにずた袋を持った映見が元気に走って現れ、その袋から小さな砂のような種を一握りずつ取り出してみんなに渡している。
映見は豪快に種を放り上げ、それらは風に乗って流れていく。それにならってみんなも同じように種を大地に撒き散らした。
やがて種はにょきにょきと芽を出して辺り一面を緑の海にしていく。そしてそれはずっと先へと増え続け、それを見てみんな愉快に笑っていた。
映見はそうやって天国で種を撒き続けているのかもしれない。
「しつこいのもほどほどにしとけよ」
僕は自分が想像したシーンが本当のように思えて、映見に意見した。
『しつこいということは、一生懸命ってこと。ベストをつくして何が悪い』
そんな言い返しが聞こえてきそうだった。
僕はポケットからスマホを取り出し、その辺りに生えているペパーミントに向かって撮影する。
映見がそこに立って笑顔を向けているように感じた。
映見、本当は僕の傍にいるんだろ。だって映見が賭けに勝ったんだから。僕を放っておくわけがないじゃないか。
柴太君が何もない空間をじっと見ていた。
もしかしたら柴太君には映見の姿が見えているのかもしれない。
僕も同じ方向を見る。
そして映見に負けないくらいの笑顔を向けてやった。
風が吹いて妙に目じりや線を描いたように頬がスースーした。でもペパーミントのようにそれはすっきりとして、映見に優しく触れられている気分だった。
(了)