けれどそんな僕の考えとは真逆に依から発せられたのは
『ほんと!?すごくない!?』
驚く声と、輝きの眼差しだった。
『え……?』
『いや、自作の小説なんてすごいじゃん!読んでいい!?いいよね!?じゃあちょっと借りるね!』
そう言って依は閉館時刻間際ということも気にせず近くの席に座り、僕のノートを読み始めた。
自分の小説を人に読まれている。
しかも、別世界の人だと思っていた彼女に。
そのことに緊張と困惑が一斉に頭の中を占めた。
待っている間もどうしていいかわからずに、とりあえず依の座る席からふたつ空けた席に座って、そわそわと参考書を開いたり閉じたりしていた。
そしてしばらくして、閉館を告げるBGMが鳴ったと同時に依はノートをパタンと閉じた。
『あー、面白かった!ね、これまだ途中だよね?続きないの?』
『えっ、いや、続きはまだ……』
『えーっ、じゃあ書いて書いて!読みたい!』
キラキラとした目で彼女が言う『読みたい』の言葉に、お世辞かもしれないと思いながらも嬉しさが込み上げる。
絶対、笑われると思ったのに。
暗いやつ、地味な趣味、それが将来なにになるのか、そう否定されるかもしれないと思ったのに。
『……笑わないのか?』
思わずたずねた僕に、依は意味がわからなそうに首をかしげた。