呪いの起源だなんて。


話が飛躍しすぎていると普通なら思うだろうけど、今の動きが鈍った頭では、それすら考えなくて。


海琉の後に付いて、私は階段を下りた。


ピアノの音ということは、音楽室から聞こえているに違いない。


長い廊下の一番端。


突き当たりの防音扉の部屋が、音楽室だ。


「それにしてもなんつーか。夢の中で聴くより全然いい曲だな。じっくり聴く余裕がねぇってのもあるけどよ」


「海琉、お前にこういう曲の善し悪しがわかるのか?意外だな」


「うるっせぇよ!」


でも、海琉が言いたいことはわかる気がする。


なんだか、荘厳な感じがするけどどこか物悲しいような……たとえるなら、大事なものが失われてしまった悲哀みたいな。


呪われている私達の心でさえ、綺麗に洗われるような美しい曲だった。


音楽室の前まで歩いて、海琉がゆっくりと防音扉開ける。


授業をやっているわけではなくて、広い音楽室の中にいたのは、ピアノを弾いている男の先生が一人だけ。


肩まで伸びた長い髪、鍵盤を弾く白い指。


私達は、その先生が奏でる美しい旋律に心を奪われて。


入り口に固まって、ただ立ち尽くして先生を見ていた。