それはあまりに不気味な出来事だった。


考えてみれば、クラスメイトがわざわざお棺の中にあったノートを取って、机の中に入れるわけがない。


仮に、月菜の親族の人が、このノートを取り出したとしても、わざわざ学校の机の中に入れるなんて事をするはずがないのだから。


光星が来たら、昨日の夢の中で私を売ろうとしたこと、全然引き付けられなかったこと、言いたいことは沢山あって、問い詰めてやろうと思ったけど……もうそれどころじゃない。


「お前ら、ちょっと来いよ」


戸惑っていた海琉が、何やら決意でも秘めたような表情に変わり、私と摩耶に廊下を指さして見せた。


「え?もうすぐホームルームが……」


「んな状況じゃねぇだろ!光星、お前も来い。ノートを持って来いよ」


項垂れる光星の肩を叩き、海琉は廊下に出た。


光星にも、私達に言いたいことの一つや二つはあっただろうけど、このノートが全ての感情を吹き飛ばしたと言うか。


言い知れぬ不安が、私達の感情をかき消したようだった。


「どうする?若葉」


「どうするったって、この眠気じゃ授業中に眠っちゃいそうだし。海琉が言う通り、まともに授業なんて受けられる状況じゃないよ」