二人で話をしていると、その摩耶が泣き出しそうな顔で教室に入って来た。


額には人の顔の黒いアザ。


何かを言いたいんだろうなということは、表情を見ればわかる。


「ね、ねえ!なんで!?なんで出られなかったの!?あんなの聞いてないよ!」


私と海琉の前に駆け寄り、突然大声を上げる摩耶。


あの悲鳴を聞いて、多分そうじゃないかと思ったけど、やっぱり出られなかったんだ。


危なくなったら逃げられる状態で、殺されるなんて、それくらいしか考えられないから。


「お前、出られなかったから死んでたのか。俺は出られたぜ?玄関の出口だろ?」


海琉のその言葉で、摩耶の口調がさらに荒くなる。


「なんでなのよ!私が出られなくて、どうして海琉も光星も出ることが出来たの!?そんな不公平ないよ!一体どうやったのよ!ねぇ!」


こんな摩耶は見たことがなかったから、海琉の肩を掴んで前後に揺すっている姿は、本当に摩耶かと思ってしまう。


「落ち着け!落ち着けって!!んなもん俺が知るかよ!俺が何を知ってるって言うんだよ!」


「そうだよ摩耶。海琉に当たっても仕方ないよ」


摩耶も私も、結局殺されてしまって、死の苦しみを味わってしまった。


その二度味わった感覚は今も鮮明に、色褪せることなく記憶に残っている。


どうしてと怒る気持ちもわからなくはないけども。