出口の前で白い物を引き付けて、他の人が出口を探すまでの時間を稼ぐ。


光星の提案だけど、これしか方法が思い付かないんだよね。


引き付ける人には負担がかかるけど、それでも出口があるという安心感はあるはずだ。


「わ、わかった。任せて」


摩耶にそう言われて、こんな状況だけどほんの少し安心した。


そして……階段の方から、あの足音が聞こえたのだ。





シャリ……シャリ……。





音が、こっちに近付いて来るのがわかる。


玄関の前の廊下に差し掛かり、そこを真っ直ぐ横切ろうとしている足音だ。


私は下足箱に隠れ、摩耶が出口の前で白い物を待ち構える。


摩耶と離れていても、摩耶の緊張が伝わって来るようで。


心臓の音が聞こえそうなくらいだ。


いよいよその時がやって来たのだろう。


摩耶が小さく「ひっ!」と声を上げ、ついに白い物を見たのだと理解した。


心の中で「任せたよ」と呟いて、私はそっと廊下に向かって移動を始めた。


なるべく音を立てないように。


ゆっくりと、ゆっくりと歩いて、廊下に到着したその時だった。






「フヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!ヒャハハハハハハッ!」





不気味でおぞましい笑い声が聞こえたのだ。