「さ、最低!」


思わず声が漏れた。


光星からすれば、白い物を押し付けた私達の方が最低なんだろうけど、それでも言わずにはいられなかった。


その言葉で白い物は振り返るかと思ったけど……そうではなく、ピクリとも動かずに光星の方を見ているままで。


私はホッと胸を撫で下ろして廊下に出た。


摩耶もそれを見て、私に続く。


「お、おい!お前ら!俺を見捨てて行くな!頼むから、頼むから戻って来てくれ!!」


喉が千切れんばかりの悲痛な叫び。


心の中で「ごめん!」と何度も呟きながら、耳を塞いで海琉が走った方へと急いだ。


先ほど、この階に下りてきた階段が目の前にある。


T字になった廊下、そこに差し掛かると……右の方から足音が聞こえる。


摩耶を待って右に曲がると、足元に気をつけながら走った。


「ね、ねえ若葉。私、もうどうすればいいかわからないよ」


「それって光星のこと?それとも……」


ずっと続く白い夢のこと?


頭の中ではそう思っていても、声に出すことはしたくなかった。


「どっちも。今だって自分が助かる為に若葉に白い物を押し付けようとしたけど……でも、それは私達が先に光星に押し付けたからだし……ああもう、わからないよ」


考えることはいっぱいあるけど、今はとにかく出口に辿り着きたい。


白い物に捕まっちゃダメな状況で、ゆっくり考え事なんて出来ないから。