私達にはどうすることも出来ない。


この部屋はドアが一つしかなくて、ここに白い物が来たら逃げられないから。


さっさと離れれば良かったんだろうけど、光星がここにいたことに驚いて、状況を整理するのに時間がかかった。


誰かが犠牲になって、白い物の動きを止めなければ、あっという間に全員殺されてしまう。


だから海琉が、光星に白い物を引き付けろと言った時……申し訳ないけど私は何も反論が出来なかった。


出口を見付けたところで、ずっとこの夢を見続けるという絶望に、死にたくないということしか考えられなかったから。


そんな事を考えていると、入り口側にいる海琉が私達を見て、廊下の方を指さした。


これは、移動しろということなのかな。


今、白い物の場所は図書室に入って2mくらい?


丁度、私の後ろにいる摩耶の、カウンターを挟んで向こう側くらいだ。


幸いこのカウンターの内側には天井が落ちていないから、歩きやすくなっている。


床を這って、入り口側のカウンターの切れ目から海琉が飛び出し、廊下に出た。


私も海琉と同じように、音を立てないように前進して、カウンターの切れ目から廊下に飛び出した。


その時だった。


「おい!後ろだ!ほら、他にも人がいるんだぞ!後ろを向けよ!」


光星が……私を指さして白い物にそう叫んだのだ。