「待って……ピアノの音が消えた。白い物が近くにいるんじゃない!?」


摩耶が耳に手を当てて、話を遮った。


「そりゃああんなに声を出してりゃ、バカでも気付くだろ。俺達はカウンターの裏に隠れるからな。お前は白い物を引き付けろ。わかったな?」


私と摩耶は、海琉に背中を押されて、埃を被ったカウンターの内側へと移動した。


そして、なるべく入り口に近い場所で屈んで隠れる。


「ま、待てよ!なんで俺だけ……」


光星も隠れようとしたのだろう。


だけど、それよりも早く、あの死の塊は姿を見せたのだ。


入り口から図書室の中に入り、ガクンガクンと両肩を上下に揺らし、光星目掛けて凄まじいスピードで迫る。


「う、うわあああああああっ!!」


驚いても、目を瞑ることすら出来ない。


それはつまり、死に繋がるのだから。


光星が白い物を見る。


動きを止め、カタカタと小さく口を動かす白い物。


本当に、ここからは見えないはずなのに、今、どんな状況なのかが手に取るようにわかる。


「ひ、ひぃぃぃっ!!お、俺を見るなよ!気持ち悪い顔を向けるな!!」


見るだけで、まるで氷でも押し付けられているかのような悪寒が走る、不気味で恐ろしい顔。


それを、ジッと見続けなければならないだけでも、精神がガリガリと音を立てて削られているように思えるのだ。