「お前ら、目を逸らすなよ……こんな場所で襲われたら、全員纏めてお陀仏だぜ」


強がっていても、声が震えているのがわかる。


だけど……ピアノの音は聞こえている?


どういうこと?


もしかして、偶然ピアノの音が途切れた時に、白い物に襲われていたってことなの?


わからない。


考える余裕なんて全くない。


部屋の奥にいる何かは、その場にゆっくりと立ち上がり、フラフラした足取りでこちらに向かって歩いて来る。


「お、おいおいおい!目を逸らしてねぇぞ!なんで……」


「海琉、違う!白い物じゃないよ!あれは……人だよ」


私がそう感じた理由は単純なものだった。


ピアノの音が聞こえているというのも確かにあるけれど、それよりも誰かがわからないというのが一番の理由。


昨日見た白い物は、どこにいても……それこそ、暗くて見えないような場所にいても、肌の白さが浮き上がるように見えて、それが白い物だとわかるはずだから。


だとするとこの人は……やっぱり月菜のノートを見てしまった人?


それ以外は考えられない。


ゆっくりと、その人が私達の前まで歩いて来た。


そして、その顔がわかる場所まで近付いた時、私は目を見開いて言葉を失った。