レールから外れ、床に倒れているドアの上を歩いて室内に入る。


大きな棚が、床の上に折り重なるように倒れていて、そこに入れられていたであろう本は一冊もない。


「で?その出口ってのはどこにあったんだよ」


「え、えっと……部屋の奥がぼんやりと明るかったから、なんだろうと思ったんだけど……」


不安そうに、部屋の奥を指さした摩耶。


だけどそこは、ぼんやりと明るいどころか、暗闇に包まれていて。


私達の希望は、音を立てて崩れ落ちたような気さえした。


「何にもないね……ごめん」


「まあ気にすんなって。言っただろ?ダメで元々だってよ」


俯いて、しゅんとする摩耶の頭に手を置いて、ポンポンと軽く叩いて見せた海琉。


こういう気遣いを光星にも見せられたら、喧嘩になる事もなかったのに。


と、そんなことを考えていた時だった。







シャリ……。







部屋の窓側の奥。


暗くてよくわからないけれど、そこからガラスを踏むような音が聞こえて。


私達は慌ててその方向に視線を向けた。


白い物がいないと思って安心していた。


ここに出口があるかもしらないって。


それが、ピアノの音に意識を向けるのを忘れさせてしまったのかもしれない。