「え!?もしもあの1ページ目を見てない人だったらどうするの!?自分が何をさせられてるか、白い物からをどうすればいいとか、何もわからないんだよ!?」


「……こう言っちゃなんだけどよ。摩耶は名前も知らない、顔も見たこともない外国人が、世界のどこかで今死にそうだとして。そんなやつまで助けないといけないって思えるのか?」


それは論理の飛躍だと思うけど……それでも私は海琉に反論が出来なかった。


その音を立てた人が誰であれ、私は見付かったら真っ先に殺される状況にあったから。


人でなしと思われるかもしれないけど、助かったと思いこそすれ、その人を助けないととはとても思えなかった。


「見えないところで、誰がどんな目に遭ってたとしても平気で見捨てられるのが人間だろ。気にすることはねぇよ。誰だってそうする」


「そう……なのかな。私にはわからないよ」


そういう哲学みたいな話は、この場でしていても仕方がない。


いや……きっと私がそう思うのは、音を立てた人に対して罪悪感を感じたくないからだろうな。


「とにかく、出口を探してから考えよう。この場所にいたくないよ」


私には、そう言うのが精一杯なほど、余裕がなかった。