「なんだよ、聞こえなかったのか?ガラスが割れるような音が聞こえたぜ?」


私は、早くどこかに行ってと祈り続けていたからか、そんな音がしていたことにさえ気付かなかったよ。


「それでよ、ガラスを踏むような音も聞こえたんだけど……どういうことだ?」


壁に背を付けた状態で立ち上がり、海琉が首を傾げて頭を掻いた。


その言葉を一瞬理解出来なかったけれど、よく考えてみれば確かにおかしい。


「ちょっと待ってよ。この夢を見ているのは私達だけじゃないの?だって、光星は出口を見付けたんでしょ?あの言葉が書かれてるノートは、月菜のお棺の中に入れてもらったし……」


私達以外に、ガラスを踏むような音を立てる人がいるはずないのに。


「も、もしかしてさ。お棺の中のノートを、誰かが開いちゃったってこと……ないよね?」


摩耶が、私も考えていた可能性を口にした。


私達はホールの外にずっといたから、もしもお棺の中のノートを見た人がいたとしても、それに気付かなかった可能性がある。


つまり、何も知らない誰かが、この夢に迷い込んだかもしれないのだ。


「そうだとしても、お前らとはと協力はするけど、知りもしねぇやつを助ける義理なんてねぇからな。白い物を引き付けてくれるなら結構じゃねぇか。利用させてもらおうぜ」