「アアア……アア……」
白い物が、この教室の前に差し掛かった。
唸り声と言うよりは、喉を鳴らすような音を発している。
これが夢だからだろうか。
見たくないのに、白い物が何をしているかがわかってしまう。
不気味な笑顔でこの教室の中をジッと見詰め、何か気になることがあるのか、首を傾げる。
海琉、摩耶、そして私は、ほぼ寝転がっているような体勢で、白い物に見付からないようにと、壁に身体を押し付けて口を塞いでいた。
ほんの僅かな呼吸音、微かな動きでさえ気取られてしまうような。
指先一つ動かせない、動かせば身体を切り刻まれてしまいそうな程の張り詰めた緊張と恐怖。
早く行って、早くこの場からいなくなってと、たった一秒が永遠とも思える時間祈っていた。
だけど……。
ガタッ。
ガラスが無くなった窓枠。
そこに手を置いて、ゆっくりと教室内に、白い物の顔が侵入して来たのだ。
教室の中をじっくりと確認するように、醜悪な笑顔が私の直上に。
このまま下を向かれただけで見付けられてしまう!
生きた心地がしない。
震えないで、震えないでと、自分に言い聞かせるように心の中で呟くけど、それで止まるほど軽い恐怖ではなかった。
徐々に白い物の顔が、私がいる下へと向いて行く。
そして……。