「な、何をしてるんだ。それを下ろせよ。ステーキナイフでそんなことが出来るわけないだろ」


「あ?じゃあ試してみるかよ?俺はテメェが死ぬまで手を止めねぇぞ?」


誰がどう見てもまずい状況だと言うのがわかる。


海琉がそんなことをするとは思えないけれど、放っておくわけにはいかない。


「か、海琉!何してるのよ!それを下ろして!」


「こいつが舐めてるからよ。失敗しても諦めるな?何度も死ねって言ってんのかテメェは。真っ先に逃げ出したやつが、高みの見物決め込んでんじゃねぇぞ!ムカつくんだよ!」


「海琉、いいから!それを下ろして!早く!!」


しばらく光星を睨み付けていたけれど、何度も私がそう言うと、舌打ちをしてナイフをテーブルの上に置いた。


そして、ポケットから財布を出すと、千円札を叩き付けて。


「ムカつくから帰るわ」


とだけ言って席を立ってしまったのだ。


私も摩耶も驚いたけど、一番驚いたのは光星だろう。


本当に殺されると思ったのか、目には涙を浮かべて、荒くなった呼吸を整えていた。


「な、なんなんだよ!俺が出口を見付けたのは偶然だろ!!なんで俺があんなことを言われなきゃならないんだよ!」