周りをよく見ると、三人だけではなかった。


教室の中にいる全員が、私がノートを取り出すのを見ていたのだ。


そんな目で見ないでよ……。


嫌だなと思いながらも、もうここまで来ると私が取り出さなければならないような空気になっている。


半ば諦めて、机の中にあるノートを取り出して。


私の机まで持ってきた。


「うわ……なんか下のほうがふやけてんじゃん。もしかしてこれ、よだれか?」


海琉が指さした場所は、確かに紙がふやけていて。


口から垂れたよだれが、ノートを濡らしたのだと容易に想像出来た。


「とりあえず開いてみろよ。何か書かれてるかもしれない」


光星に言われ、しぶしぶ表紙を捲った私は……言いようのない恐怖を覚えた。


最初のページ。


もう、そこだけで言葉を失うくらいには不気味で、私はこの次のページを捲るべきか悩んでいた。


「なんだ……これ。こんなの聞いたことあるか?」


「あ、あるわけないだろ。でも、もしこれが本当だったとしたら……早瀬がおかしくなったのも辻褄が合うよな」


私も、光星の意見に納得しそうになる。


これが本当……と考えるには無茶だと思うけど。


だけど、それが本当と思ってしまうほど、月菜が異常だったから。