白い夢

振り返ると、昨日よりもまた少しやつれたような顔のおばさんが、私達を心配するような表情で見ていた。


「あ、えっと、昨日言ってたノートを持ってきたんですけど……」


そう言いながら、手に持っていたノートをおばさんに差し出した。


「その為に……こんな早く来てくれたの?いつでも良かったのに」


「あ、いや……早く渡したかったから」


本当は、持っていたくないから持ってきたなんて言えない。


このノートさえなければ、私達は白い夢を見なくても済んだのだから。


「ありがとうね、若葉ちゃん。あの子のノートか。ふふ、ちゃんと勉強してたのかしらね」


私からノートを受け取り、悲しそうな笑顔を浮かべながらノートを捲ろうとした。


その瞬間。


「……中は、見ない方がいいっす。その、なんと言うか……早瀬がおかしくなってから書いてたやつなんで。中はとてもじゃねぇけど、見られたもんじゃないっすよ」


海琉がノートを押さえて、言葉を選びながらおばさんにそう言った。


私は……どうしてこうなる可能性を考えてなかったのだろう。


おばさんに渡せば、中を見ようとするなんて当たり前の事なのに。