海琉もそれを聞いたのだろう。


「うおっ!」という吐息混じりの声を上げて。


慌ててホールから出ると、その音は聞こえなくなった。


「え、ど、どうしたの二人とも」


「わ、わからないけど……やっぱり何かおかしい」


あの音が何なのか、近くにいたおじさんやおばさん達は聞こえなかったのか。


いや、これはきっと、私達にしか聞こえていないのだろう。


白い夢を見ている私達にしか。


「やべぇな。俺達は入らない方がいいかもしれないぜ。気持ち悪くていられたもんじゃねぇよ」


「ふん。随分弱気だな。普段は強がっているくせに」


「あぁ?俺と若葉を犠牲にして逃げ出したチキン野郎に言われたくはねぇな!」


よせばいいのに、こんな場所で険悪な雰囲気。


「二人とも、場所を考えてよ!」


摩耶に叱責されて、バツが悪そうに二人とも顔を背ける。


それにしても、二人はいつも言い合いはしているけど、今日はなんだか違うように思える。


目が笑っていないというか……いつもと違って冷たい。





「若葉ちゃん?」





そんな事を考えていると、背後から声を掛けられた。


その声はおばさんで、騒いでいる私達に気付いたのだろう。