和田先生が演奏している間に、微かに瞼を開いた私は、驚いて目を擦った。


だけど、和田先生が気持ち良さそうにピアノを弾いているだけ。


「ん？どうしたんだよ」


私が動いたのに気付いたのか、海琉も目を開けて私を見る。


「んーん。何でもない。今ね、進波音が先生の隣にいたような気がして」


「そうか。まあ、喜んでるかもしれねぇな。先生と二人で作ろうとした曲なんだろ？だったら、本当にいたのかもしれねぇ」


「うん……そうだね」


まさか海琉がそんなことを言うなんて思わなかったな。


「あ、そうそう。知ってる？最近、誰もいないはずの音楽室からピアノの音が聞こえるって噂が流れてるの。和田先生が弾いてるのにね」


「はっ、なんだよそれ。まあ授業中だし、誰も確認には来れねぇからな」


私と海琉は、そんな和田先生の演奏を聴いて、二限目を過ごした。


和田先生も、初めて会った時とは違う、とても晴れやかな表情で。


きっと、進波音と和田先生は、良い関係だったんだろうなって、この曲を聴いたら理解出来た。


その後、私達は教室に戻って授業を受けた。


まだ、フワフワとした感覚が残っていて、集中出来たかと言われれば、集中は出来なかったけど。


放課後に、悪夢が終わってから一度も行ってない、摩耶と光星のお見舞いに行こうと海琉と話して。


私達はそれぞれの時間を過ごした。