白い物は、それを知ってか知らずか、私達をニタニタしながら見ている。


相変わらず口はカタカタと動いていて、目はキョロキョロと動いて。


見れば見るほど気持ち悪くて、目を逸らしてはいけないという思いはあるのに、見たくないと思わせる表情だった。


そして、私が思わず目を逸らした時だった。






「フヒヒヒヒヒヒヒヒッ!」





と、いう小さな笑い声のような音を吐き出し、私達に物凄い速度で迫ったのだ。


「うわわわわわっ!!ストップ!ストップ!!」


私が目を逸らしたタイミングで、全員が偶然この白い物の目を見ていなかったのだろう。


さっきまで、5メートルほど離れた場所にいたのに、今はもう目と鼻の先……手を伸ばせば届きそうなほど近くにいた。


そして、白い物のダラりと下がっていた手が、私達を掴もうと上げられたのだ。


「ひ、ひいいいっ!!」


その手が、今にも私に触れそうになって、慌ててお尻を床に付いたまま後退する。


「マジでどうすんだこれ!!出口を探すどころじゃねぇぞ!!」


海琉の言う通りだ。


この不気味な白い物から目を逸らした瞬間、物凄い速度で近付かれる。


目を逸らさずに出口を探すなんて、出来るはずがないよ!