廊下の奥の階段に差し掛かると、踊り場には進波音と月菜が様子を窺うようにこちらを見ていた。


襲ってくる様子はない……と言うよりも、それ以上は進めないと言った様子で。


ノート達を握り締め、あの場所へとやって来た。


「!!」


いる……。


篠目ふみの遺体があった場所から、まるで水の中から出てくるかのように、ゆっくりとこちらに向かって歩いて来る白い物が。


「こ、こいつが……」


「あ、あわわ……」


私だけじゃなく、二人ともそう言うのが精一杯のようで。


海琉でさえ、身体が震えているのがわかった。


他の白い物とは違う、笑っていなくて真顔で私達を見ている。


動けない……あまりに恐ろしくて、声も出せない。


そんな中で、白い物は和田先生の方に近付いた。


「あ、あわわ……や、やめて……僕達は……キミの……」


そんな和田先生の声も無視して、胸に手を伸ばしたのだ。


ダメだ、このままじゃ和田先生が心臓を取り出されて食べられてしまう。


動いて……お願い、少しでいいから!


そう強く願いながら、白い物にノート達を突き付けた。


「もう……大丈夫だから。あなたはもうすぐ家に帰れるから。あなたの名前は……」


やっとの思いでそこまで言った時だった。