目を開けると、そこは校舎の中。
大きな部屋の中に、私と手を繋いだ海琉と、和田先生の姿。
手にはノート達が握られていて、悪夢の中まで持ってこられたんだと安心した。
「やれやれ、もう寝るのは秒だな。こんなに眠かったらそれも仕方ねぇか」
「行こう。さっきの場所に。そこにきっと、篠目ふみがいるはずだ」
でも、大丈夫かな。
悪夢の中の篠目ふみは、あまりの恐ろしさに身動きが取れなくて、心臓を掴み出されたから、ノート達を返して名前を教えるなんて出来るのかな。
和田先生の後に続いて、私と海琉も廊下に出る。
相変わらずピアノの音が聞こえていて、悪夢の中なんだなと思い知らされる。
「うん、大丈夫だ。ピアノの音が聞こえてるってことは、波音は近くにいないってことだな。さあ、今のうちに行こう」
どうやらそこは、校舎と校舎を繋ぐ廊下。
丁度生徒玄関の上にある部屋で、私達は音楽室がある校舎へと急いだ。
渡り廊下を渡り、階段を下りて。
すると、現実でも感じた重く痛い空気が私達を包み込む。
「重い……苦しい……」
「おい、しっかりしろ若葉!すぐそこなんだぜ」
海琉に励まされ、私は頷いて廊下を歩き始めた。