月菜には、月菜のノートを押し付ければ消えるはず。


そう思って、この重い空気の中で息を止めているけど……。


ガクンガクンと肩を揺らしながら、月菜は私に近付いて来た。


「ひっ!」と、心の中で悲鳴を上げて、漏れそうになる息を必死に止める。


少し離れた場所で、私の顔をジッと覗き込んで。


ノートを押し当てたいけど、少しでも動くと息が漏れてしまいそう。


体調の関係か、それともこの空気のせいか、10秒も経っていないのに、もう限界。


また苦痛を味わうのは嫌だけど、本当に死ぬわけじゃない。


もう、息が漏れる……と諦めそうになる寸前。







「若……葉……私の……友達……」







そう言ったかと思うと、相変わらずの動きで教室から出て行ったのだ。


何が起こったのかはわからない。


わからないけど、月菜は私だとわかってくれたんだという安心感と共に、息を吐いた。


私達だけじゃなくて、月菜も終わりが近いとわかっているのかな。


都合のいい解釈かもしれないけど、そう思ってしまう。


最期まで苦しみ続けた月菜。


そんな月菜を、これで救えるかもしれないんだと考えて、私も廊下を出た。