と、そう思ったけれど……白い物は踊り場から一階には下りて来なかったのだ。


それどころか、白い物の身体がガタガタと震えているような。


「何なんだ……一体。でも、下りて来ねぇなら都合がいいぜ。さっさと行くぞ。こんな場所、早く離れたいからな」


海琉の言葉で、廊下の奥へと移動を始めた。


でも、奥に進むにつれて、酷く重く、痛い空気が全身を包み込んで。


まるで見えない壁でもあるかのように、歩くだけで精一杯だった。


眠気と、意識がはっきりとしない状況下で、そんなふうに感じているのかとも思ったけれど。


何とか……その場所に辿り着くことが出来た。


「ここ……だよな、明らかに。なんだよこれ……」


「ぼ、僕が在学中はこんなことにはなっていなかった。当然だが、こんなことになっていれば、誰かが気付くだろうからね」


その光景を見て、海琉と和田先生が息を飲んだ。


いや、二人だけじゃない。


私も……そして丸山さんも、間違いなくここに「それ」はあると肌で感じたのだ。


階段の横、外に出る引き戸が奥にある暗い通路。


そこが、人の形に見える盛り上がりを見せていたのだから。