「おい!まだかよ!」


踊り場で白い物を見詰めている海琉が声を上げ、和田先生は慌てた様子で視線を戻した。


「だ、大丈夫だ、野澤くん。移動してくれ」


和田先生の言葉に小さく舌打ちし、一階に下りた海琉。


そして、この空気を感じたのだろう。


声には出さなかったけれど、眉間にシワを寄せて、額の汗を拭った。


「な、なあ。ノブリンやお前達が何をしているのかなんて、やっぱり聞かない方が良いか?」


「そ、そうですね。丸山さんには見えないと思いますから。知らない方がいいと思います」


「だよな。俺もそんな気がする」


私も元々霊感なんてないし、そんな自分が普通だと思っていたけど、幽霊が見えないことがこんなに羨ましいと思うなんて。


それが幸せだと思う時が来るなんて考えもしなかった。


「よ、よし。じゃあキミ達は、神崎さんが白い物を見た場所まで行ってくれ。きっとそこに篠目ふみの遺体が埋められているはず……うん?」


和田先生が、そこまで言って首を傾げた。


何か気になることでもあったのかと、和田先生を見てみると……何を考えているのか、視線が左右に揺れていたのだ。


「せ、先生!?」


視線を逸らせば白い物が動き出すのに!