その時だった。


ギュッと手首を凄まじい力で掴まれて、私は慌てて手を引いた。


「ひいっ!!」


「うおっ!」


机の中から、ズルリと引き出された、細く長い腕。


それだけじゃない。


他にも何本も、私達がノートを回収するのを阻むかのように、机の中から白い腕が伸びていたのだ。


「オオオオオオオオオン……」


まるで、こっちに来いと言わんばかりに、手招きをしているようで。


低い呻き声のようなものが、さらに不気味さを醸し出す。


ゾワゾワっと全身に鳥肌が立つのがわかった。


それほどにおぞましい、ひとつの生き物のような気持ち悪さを感じた。


「く、くそっ!邪魔するんじゃねぇ!何度も何度も殺しやがってよ!ぶっ殺すぞ!」


声を上げ、机の上の花瓶を手に取った海琉は、その腕の群れを殴り付けたのだ。


「オオオオオオオオオ……」


殴り付けられた腕が、ひとつひとつ引っ込んで行く。


そして、最後の腕を殴り付けると……元の机に戻ったのだ。


「ハァ……ハァ……ふざけんなこの野郎!!」


花瓶を床に投げ捨てて、ガシャンという音が聞こえた後に、海琉は机の中のノートを手に取った。