「丸山さんはまだ来てねぇな。なら、今のうちに日記とノートの回収だな」


「ああ、丸山には機材を準備してもらっている。だから、取りに行く時間くらいはあるさ」


「んじゃあ、俺と若葉は早瀬のノートを取ってくるから、先生は日記を頼んだぜ。まさか一人では怖いとか言わないよな?」


いや、いくらなんでもそれは和田先生に失礼なんじゃないかな。


子供のおつかいじゃないんだから。


「ま、ま、まさかそんなわけ!だ、だ、大丈夫さ大丈夫さ。僕は怖くない……そうさ!僕は怖くないさ!」


あ、これ……すっごく怖がってるやつだ。


でも、私も先生のことを言えるほど余裕なんてないんだよね。


いつ、どこから白い物が現れるかわからない。


それが幽霊なのか、私が見ている幻覚なのかさえわからない。


それなのに、感じる痛みと苦しさは現実としか思えなくて、今までに味わったものは、もれなく鮮明に思い出すことができるのだから。


二度とあんな苦しみを味わいたくないと思いながら、何度味わってしまったか。


「行こう。ここまで来たら、何度苦痛を味わっても進まなきゃ」


誰に、と言うよりも自分に言い聞かせるように呟いて、私は学校に足を踏み入れた。