しばらくして、救急車がやって来た。


救急隊員もその部屋のあまりの惨状に、一瞬部屋に入るのを躊躇したけれど、直ぐに部屋に入り、光星と摩耶を運び出して病院に向かった。


光星のお母さんは半狂乱になりながらも一緒に救急車に乗り込んで。


私と海琉は、暗い雰囲気のまま、海琉の家に向かって歩いていた。


「あいつら……もう限界だったんだろうな」


「うん……摩耶はもう無理そうだったけど、どうして光星まで」


そう呟いてみたものの、理由は何となくわからなくもない。


光星は摩耶が好きで、好きな摩耶が狂ってしまった。


だけど諦めて放置するわけにもいかなくて、何とかしようとしたんだろうな。


それが、結果的にあんな形になってしまったんだ。


「若葉は……あんなふうになるなよ」


そう呟いた海琉は、なんだか寂しそうで。


やつれているのも相まって、とても弱々しく見えた。


摩耶と光星があんなになって、私もいよいよ気がおかしくなりそうになるかと思ったけど。


逆に、あんな姿を見てしまって、こんな姿にはなりたくないと思えたから。


「私はまだ大丈夫。海琉が一緒にいてくれるんでしょ。この先もずっと」