「海……琉。摩耶を……責めないで」


私達がいることに気付いたのか、海琉が息も絶え絶えに言葉を発した。


「馬鹿野郎が……お前も責めてるんだよ!こんな手段を選びやがってよ!」


「もう……こうするしか……疲れた……んだ。悪夢も……何もかも……」


海琉に左手を伸ばすが、手首から先がないことに気付いて光星は腕を下ろした。


「そうよ……私と光星は、二人でずっと一緒にいるの。永遠に……誰にも邪魔をされずに!」


摩耶にしがみつかれ、光星に見詰められながら、海琉は何を感じていたのか。


背中しか見えないけど、きっと顔をくしゃくしゃに歪めて、今にも泣き出しそうな顔になっているに違いなかった。


「馬鹿野郎が……馬鹿野郎が……」


「海琉……若葉……俺は聞こえたんだ……白い……物の声が。『死体を見付けなきゃ……家に帰さなきゃ』って……何かの役に……立つかな……」


「うるせぇっ!お前ら静かにしてろ!動くな!もうすぐ救急車が来るからよ!絶対に、絶対に死ぬんじゃねえぞ!!」


摩耶を振り払い、部屋の中にあった光星の服を破り、出血を止める為に腕や脚を縛り始めた。


涙を流しながら、必死に二人を助けようとする海琉を、私はただ見ていることしか出来なかった。