月菜のノートを見た時は、確かに「ミシナンネ」と書いてあったけど、この日記の文字はその違和感が表れている。


埋め尽くすように書かれているその文字。


何箇所か、「ナ」の文字は「メ」に見えるし、「ネ」だって不自然に文字が大きいような。


でも、それに気付いたところで私にはそれが何を意味しているのか、全くわからない。


「むうっ……そうなると、この言葉は偶然、波音のアナグラムになったというだけなのか。僕としたことが、とんだ思い違いをしていたのか」


「とにかくよ、この昭和55年の8月2日に何があったのか。何もねぇ、ただのイタズラかもしれねぇけど、調べるしかないだろ。事件が明るみに出てねぇとしたら調べようもないかもしれねぇけど」


他にも何か書かれていないかと、海琉がパラパラと日記を見るけれど、相変わらず「知ってはならない言葉」が書かれているだけ。


「よ、よし。それは僕が調べよう。過去に逃げ出した悪夢の原因か。僕に相応しい仕事じゃないか」


「いや、相応しいかどうかは知らねぇけどよ。やるって言うなら任せたぜ先生よ。俺と若葉は、光星と摩耶の様子を見てくるぜ。連絡もねぇし、摩耶はかなりヤバそうな気がするからな」


「わかった。何かわかれば連絡をするから。雛木さんは確かに心配だが、キミ達も同じだけ眠っていないんだ。気を強く、絶望に負けるんじゃないよ」


和田先生のその言葉に私達は頷いて。


日記を机に戻し、階段を下りた。