「……なーに馬鹿なこと言ってんだお前は!」


そう言って、近付く私の鼻をつまんで、グイッと上につまみ上げた。


「え!?い、痛い痛い!」


私が声を上げると、鼻から指を離して。


「頑張っても足りないだと!?だったらもっと頑張れば良いだけだろ!俺達の人生を、一体誰が教えてくれるってんだよ!楽になりたいってんなら、俺がこの呪いを解いて楽にしてやるよ。良い思い出がほしいってんならこれから先一緒に作って、お前が何十年後かにババアになって、病院のベッドで孫に囲まれて死ぬ時にいくらでも思い出させてやる。でも、良い思い出を作るのも死ぬのも、今じゃねぇ。それにお前は、そんなに諦めがいいやつじゃねぇだろ!」


立ち上がって指をさされ、物凄い勢いで海琉の説教が始まった。


よく眠い頭で、そんな言葉がつらつらと出てくるもんだと感心して、不思議と不快感はなかった。


「俺と一緒に頑張ろう」と言われているように思えたから。


「は、はは……まさか海琉にそんな事を言われるなんて思わなかったよ。でも、うん。海琉が一緒にいてくれるなら、もう少し頑張れそうな気がする」


「若葉が死ぬ時は、俺も一緒に死んでやるからよ。俺が死なないのに若葉が死のうとするな。わかったな」


「うん……」